ロートアイアンとは

ロートアイアンについて

ロートアイアンとは装飾が施されたフェンスや門扉等のエクステリアのことで、西欧等でよく見られます。またポストや看板、表札等の小物などもロートアイアンです。階段手摺等のインテリア、インテリア部材である庇(キャノピー)、家具や雑貨のアクセントとしても利用されています。その歴史はローマ時代まで遡り、王朝時代や、アールデゴ、バロック、アールヌーボ等時代のデザインスタイルによって変化、発展してきました。

また、民族や地域の文化によるバリエーションも見られます。元来は全て手作業による鍛造によって製造されていましたが、近年工業化が進み、ほとんどがイギリスやイタリアから既成の部品を輸入し、それらを組み合わせて製作したものです。

またそのようなロートアイアンを構成する小さな部品の生産においても機械化が大幅に進められています。既成の部品を使用することなく、全て手作業で製作された製品もありますが、そのような品は極めて高価であり、デザイン面も含めた作品として工芸的に扱われています。
特に螺旋階段等においては、現物あわせにせず、時には実物大の模型を造り、それに合うように製作することもあります。

ロートアイアン類似した製品

ロートアイアン風の鋳造アルミの建材が流通しています。鋳物は金属を型に溶解して流し込んで製造するもので、型を使用するために、ロートアイアンのように入り組んだ構造や細かい造作には適していません。このような鋳物は規格化が容易な、家具やフェンス、門扉などに多く使用されます。また、ロートアルミという鉄の代わりにアルミを使用したものも製作されています。これは作業の手間はロートアイアンと大差ありませんが、錆びにくく、軽量であることなどのメリットがある一方で、溶接に手間がかかったり、原料であるアルミが鉄より高価であることなど、細かい造作に適していないなどの欠点があります。
他にもステンレス鋼を使ったロートアイアンも存在しますが、材料が割高であり、加工が困難であるため、ロートアルミと同様に細かい造作には適していません。

ロート‐アイアン 【wrought iron】=れんてつ【錬鉄】

和鉄製造法という日本独自の砂鉄製錬法によっても製造されていましたが,主にヨーロッパやアメリカのパドル炉(パドル法)で製造されていた鉄のこと。(鍛錬によって内部のスラグをしぼり出してから使用します。粘り強く,鍛接性がよいという特徴があります。日本古来の製鉄法による和鉄もこれに当たります。が、共に今日では廃れています)

鉱滓(こうさい)含有量が多いのが錬鉄の特徴であり,その量は3~4%に達しています。錬鉄は鋼製造の場合より低い温度において半溶融状で造ることから純度が高く、錬鉄の成分の一例を示せば(スウェーデンのダンネモラ社製),マンガン0.108%,ケイ素0.037%,炭素0.05%,硫黄0.006%,リン0.012%程度です。

かろうじて鉄鉱石に含まれる脈石を1200℃前後の溶融スラグにして鉄から不十分ながら分離することができた。 こうして製造されたものが錬鉄(ブルーム,ルッペ)である。こうした錬鉄の製造がアフリカ,ヨーロッパ,西アジアの製鉄で, そこでは15,16世紀ころまで続いていた。

製鉄・製鋼

銑鉄(または鋳鉄)と鋼の区別は炭素濃度と,その可鋳性,鍛延性に依存しています。また半溶融状態で製造された場合, 焼入性の有無によって錬鉄および錬鋼と分けて呼ぶことがあります。しかし,必ずしもこれらの区別は明確ではなく,共存する他元素の濃度や種類によっても変化します。

鍛金

ブロンズや銅は鋳造して使用されることのほうが多いのですが,前1世紀の(バターシーの楯)と呼ばれるケルトのブロンズ製楯やカイロ博物館にあるペピ1世の等身大の銅像の胴部分は鍛造です。最も広くおこなわれたのが鉄の鍛造(鍛鉄wrought iron)ですが, 金,銀,銅,ブロンズに比べると,武器や農具あるいは日常品や道具に多く作られてきました。 しかし、中にはケルト文化における剣のように,武器とはいえ,鍛金による別の金属の象嵌(ぞうがん)と溶接(鍛接)とによって美しく装飾を施されたものも多い。…

ロートアイアンの基礎知識

france_gate本来ロートアイアン(Wrought Iron)は西欧の文化として発展して来たものです。 練鉄や鍛鉄と訳されていますが、工業化した現代以前には、鉄製品は全て手仕事による鍛造によって行われてきましたので。西欧では、武器や生活の道具のみならず、建築の分野においても手工芸鍛造による装飾エレメントが発達したのです。

現在では鉄の加工技術は格段に進化したことによって鉄製品はその殆どが工業製品です。しかし西欧で発展した鉄の装飾デザインの価値観は、その後も西欧文明の伝播と共に世界的に広がり、現代においてもロートアイアンとして継承されているのです。

その基本は現代においてももとより手工芸です。当然、工業技術の合理的な生産への活用はあるものの、デザインの表現と質的な価値を造り出すためにはロートアイアンに対する本質的な理解と、熟練した技術が必要不可欠となります。

18c_france_rasen_sロートアイアンは単に古い時代の製作手法を再現したものではありません。手工芸鍛鉄は人類の物造りの原点でありますが、ロートアイアンは中世に生まれ、近世、アールヌーボ、アールデコの時代を経て、さらに時代の価値観として生命を与え続けているのです。

『Wrought Iron』と云う英語の『Wrought』は『work』動詞の過去、過去完了の古い活用形です。
『Wrought』自体、鍛えた、細工した、加工したと云った意味があります。
『Wought Iron』 は人間が肉体労働によって鉄に働き掛けて様々な形や品物を力強く造りだしていくイメージが感じられます。

本来ロートアイアンはオーダーメイドで造られます。

ロートアイアンは炉で鉄の板材や棒材などのソリッドの鉄材を熱して軟化させ、様々な治具や工具を使用することによって形を造りだします。基本的には鍛冶屋の仕事と類似していますが、造るものは主として建築と生活の装飾品です。勿論、機能性は追及しますが手仕事の表現と装飾性に特化していて本質的には工芸です。
鋳造品は型に溶解した金属を流し込んで造形する製法です。鋳造品に紛らわしいところがあるとすれば、それは本来ロートアイアンによって表現されたデザインをコピーしているからです。ロートアイアンはその設計上、構造上の必然性やデザインの表現に適合した部材の質や強度を自由に選択できます。この点鋳造品より造れるものの範囲と可能性はより大きいと言えます。

ロートアイアンの製造法でも同一規格の量産品を造ることは可能です。しかし単純な量産なら鋳造品の方が効率的な場合もあります。唯一無二の物、設置される施設のコンセプトに適合する個性的なデザインを希望する場合はロートアイアンに限ります。

ロートアイアンのオーダーは完成品を評価して購入するのではありませんから、メーカーの設計やデザインの能力が大きく影響します。
その際先ず必要になるのは的確にその施設のコンセプトをデザインする能力です。当社では、ロートアイアンの専門的な能力は当然として、長年の蒐集と研究によるロートアイアンのデザインライブラリーを駆使してデザインコンセプトの策定を行います。
二次元的なグラフィックと異なりロートアイアンのデザインは画そのものが立体物として構造化される必要があります。
このことは機能的な構造物でもあり、アートとしての絵でもあるロートアイアンの大きな特徴です。この構造と画をどのように一体のものとして成立させるかが、ロートアイアンのデザインと設計の本質であり技術でもあるのです。

ロートアイアンを一口で説明すると、それは『グローバルスタンダードの工芸』です。わが国には文明開化といわれた時代にタイルや煉瓦を始めとして、西洋建築の技術や材料が少なからず導入されました。それらの殆どがその後、国産の技術や建材として発展してきました。ロートアイアンも当時必要な技術として入って来ていたと思われますが、どうしたことか、その後わが国では産業として発展しなかったのです。この原因の一つは、ロートアイアンがあまりにも純粋の手造りの仕事であったために、その後のわが国の工業化の波に乗れる条件を備えていなかったとも言えますが、当時は総ての製造業は当然手仕事であり、その後工業化に乗れなかったものでも文化の基盤に支えられたアート性の高いものは工芸になって伝統産業として今も生き残っています。当時のロートアイアンはわが国の文化の基盤を全く持たない手仕事でしたから、今更伝統産業にも成れなかったのかもしれません。それからするとロートアイアンは欧米では文化の基盤に支えられた立派な伝統産業です。

私がロートアイアンの本格的な導入に取り掛かった約35年前、当時のコピーは『ロートアイアンと言う言葉をご存じ無いと思いますが』から始まっています。日本には戦後、改めて西欧の生活様式や文化が大量に入って来ました。多くの人が海外旅行するようになり、生活のスタイルや文化も大きくグローバル化しました。現在ようやく日本のロートアイアンもグローバルスタンダードの工芸産業として復活したかのように見えます。しかしあまりにも速度が速すぎてロートアイアンという言葉が今や独り歩きしかねないといえます。これは我々がロートアイアンの伝統と文化を持たない宿命とも思えるのですが、実はロートアイアンが商品や建材の単なるカテゴリーの問題として矮小化された理解に陥ることのほうが心配です。今日は紛れも無く機能主義偏重の時代ですが、ロートアイアンは有史以来の人間と鉄の関わりの原点から出発して、十数世紀に及ぶ西欧の建築文化を支え近代の工業化時代をも生き抜いてきました。むしろ、『姿かたちの価値観』に軸足を置くロートアイアンはこのような時代に出会うことによって、かえって大きな可能性が引き出されようとしているのです。

次の命題は『ロートアイアンで何が出来るか』です。ロートアイアンの目指す可能性の世界は、様々な工業技術を使用したとしても、基本は手造りでアイデアを形にする、アート性の表現と、勿論ファンクションも実現することにあります。その為には正統なロートアイアンとは何かという問題について、設計者にもユーザーにも流通の分野に於いても正しく理解していただきたいのです。ようやくロートアイアンが日本の文化として根付きかけているのですから。